*ファレノプシス*
□新米マネージャー
1ページ/3ページ
「今日からマネージャーをしてもらう名字だ、彼には…………
幸村が、私の紹介をしてくれてる間に集まってる部員達を見回す
ざっと50〜60人近く居るんだな、部員…
氷帝が騒がれてるから印象に無かったけど
やっぱり王者と言われてるだけあって、みんな凄い
中でもレギュラー陣の周りは空気も違うって言うか…
―と、言うわけだ。では名字さん挨拶を頼むよ」
「あ、はい」
危ない危ない
周り見るのに集中し過ぎて、話聞いてなかったよ;
「はじめまして、今日転校してきた名字名前です
マネージャー業ははじめてですが、テニスは大好きなんで頑張りますね♪
短い期間ですがよろしくお願いします」
き、緊張したぁι
マネージャーってそんな目立つのかな……
気のせいか、一部生徒からは睨まれたような……
「ありがとう…ではメニュー通りに開始!」
ん?メニュー通り?
もしかして、毎日決まったことだけを行ってるのかな…?
「名字くぅん、こっちこっち」
それぞれの練習に入る選手達を見てたら、ぐぃっと腕に絡み付く感触がして見れば木村が抱きついてきていた
木村に手を引っ張られ、部室に向かう
(ってか、すっごく歩きにくい;)
「…ん?」
強い視線を感じて振り向けば、2年生?の一部選手達がこちらを見ていて…
ってゆうか、あいつら… すげぇ殺気だな
木村の事が好きとか、好意をよせてる殺気じゃ無くて…
何て言うか、挑発的なものを感じる
木村に引っ張られるまま、部室に着き、中に入れば……
「………うわぁ;」
あまりの汚さに驚きを隠せない
部室の中は、着替える為のロッカールームと調理用のガス台や冷蔵庫がある部屋の2つに別れていて
ロッカールームは各々整理整頓してるのか、まだ普通だが調理場は……酷すぎる;
ガス台は錆び付いてばっかりだし、冷蔵庫付近や棚付近はめちゃくちゃ…
いったい、普段どんな事をしているのか不安になるι
「仕事はぁ、基本ドリンクとぉ、洗濯とぉ、後は……何だっけ果夏?」
果夏?
木村が声をかけた方を見れば、汚れ物をカゴに詰めてる女の子がいた
ってか、使用済みタオルとかその辺に投げとくの??
いったいこの部は何をしているんだろうか……;
「……掃除、コート整備、ボール拾い、ボール磨き、道具の準備、草むしり…」
果夏と呼ばれた女の子が、聞こえるかどうかの小さな声で作業内容を話す
「あっそう」
「たくさん有るね…君は果夏ちゃんって言うの?俺は「知っています、さっき居ましたので…三浦果夏(みうらかな)同じく3年」
「そっか、よろしくな」
よろしくと言う意味で握手をしようと手を出せば、おずおずと抵抗しながらも握手をしてくれる三浦
(……あれ、この手)
「……っ、(面白くない)名字くぅん、ドリンクの作り方教えるよ」
「あ、うん」
ベリッと音がするんじゃ無いかと言うくらい、勢いよく三浦から引き離される
「果夏は洗濯」
「……」
え……え?;
何で1人で行くの?ってか、今の口調
「じゃぁ初めよっかこの粉を水に溶かせばok」
えι
冷蔵庫から、粉末の袋を大量に取り出しそう言う木村
確かに、粉を溶かせばドリンクになるけれど…
味は?;
「さっ初めよぅ」
--10分後 ----
「はぁ〜つかれたぁ↓ 少し休もっか♪」
狽ヲぇぇえぇぇぇえぇι
まだ、全然ドリンク出来てませんが;
ってか、木村のドリンク…水の量適当すぎて、ほとんどが水と化してる気がするι
「じゃぁ俺、続けるから休んでなよ」
「本当!?ありがとうぅ」
だんだん、この語尾疲れてきたな;
「………」
「……………」
沈黙が走る中、カチカチと携帯を弄る木村が思い出したかの様に携帯を終い、こちらを見る
「……あのね」
「ん?」
「こんな事信じて貰えないと思うんだけど…実はね私、苛められてるの」
出た―――っ(笑)
「はぁ!?誰に?」
「………果夏」
「マヂかよ…」
「前にレギュラーの人に襲われてるとこ助けて貰った事があって…
その時は落ち着いたんだけど、いまだに2人になった時怖くて…」
どう見ても怖いとかって様子じゃ無かったけど…
「大丈夫?」
「…っ、うん。だから名字くんも私を助けてね?」
え…
何それ
自分の事なんだから、自分で何とかしようってのが普通でしょ?
「俺に…出来ることならね」
「っ、ありがとうっ」
涙まで流してるけど…
嘘泣きなら、凄い演技力だな
------果夏sid-----------
「……やっぱり、辞めよっかな。馬鹿馬鹿しい」
"あの日"以来、どんなに頑張ったって
どんなに踏ん張ったって、誰にも気づいてもらえないし…
集団でシカトされるこの状況が苦しいよっ
「こんにちは」
「だ、誰!?」
考え事をしてて、背後に人が居ることに気づかなかった
「ひっどいなぁ〜
さっき挨拶したじゃん?」
「あ……名字さん」
(杏のホラ聞いていじめに来たって言うの!?)
「大変だろ…手伝うよ」
「え……っ」
(何で!?貴方も杏の味方なんでしょ?)
「俺さ…諦めるの嫌なんだ」
「え?」
「辛かろうが、苦しかろうが最後までやりきりたい。泣いたって良いじゃん?それを逃げ道につかわなけりゃ…ムカついたって腹立ったって良いんだよ、その分頑張れるから…途中で諦めると………負けって気しない?」
「……っ、」
「何言われたって"はぁい♪""って笑顔で答えてやれ。
味方になるとか敵だから殺ってやるとか、嫌いなんだわ……
ケンカは本人同士のもの他のやつが口出しちゃいけない…当たり前な事だよな…
…仲間なんだからさ」
「あ…(仲間……)」
まだ…私を、そうよんでくれる人が居たなんて
「……頑張れよ」
ザッザッと部室側に戻ってく後ろ姿…
『木村さんをいじめるな!!』
とか
『俺だけは見方だよ』
とか、形だけの言葉じゃなくて
本当に頑張れって言ってくれた人は、いつ以来だろう
うわべダケでなく…
"私"に話してくれた…
「っ、…ありがとうっ」
小さくて今にも消え入りそうな声
絶対に聞こえないと分かってても、言いたくて仕方なかった…
"ありがとう"
いろいろ、我慢してたものが溢れ出てきて鼻の奥がツーンと痛くなった
「ありが……とぅっ、」
...