*ファレノプシス*

□約束
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「ち…きしょ…っ」




ギッチリと握りしめてた拳の力を抜き、変わりに私の服を掴みながらポツポツと言葉をこぼす



「な…んで、お前なんか…お前なんかに…

何なんだよっ」




実際に涙は出てないけど、凄く辛そうな声が泣いてるかのように聞こえる



他の2人も赤也のこんな姿は見たこと無かったのか

または、自分とどこか重なるところが有るのか息づかいも静かに、こちらを見つめていて





「なん…なんだよっ」




「何が?」




まるで子供をあやす様に、比較的優しい声で話し、背中をリズムに会わせて軽く叩く




少しは警戒を解いてくれたのか、赤也の身体から少しずつ力が抜けて軽くだけど、私に預けてくれてるようにも感じた



「何で…俺の事……分かったように…っ」



「ああ……それはね」




分かったようにって言うから、本当は分かってないのかも知れないけど、"分かりたい"そう思ってるから


だって



「君たちは……昔の私に、似てるから」









何に対しても無関心の"フリ"


痛みや苦しみを無理矢理にでも1人で"背負い"



ただ



生きることだけに精一杯だった、あの頃




「に…てる…だと?」



「うん……だから」





そんなとき


私に笑顔と"頑張ろう"って元気をくれたのが





君たちなんだよ…






だから…




「次は私が力になりたい……そう、思ったの」





「…………なんだよ、それ」




「バカみたい?」




「すっげーバカみたい!………けど、赤の他人にそこまで思えるってのはスゲーと思う」




「え……」




私から離れたと思ったらスタスタと2人の所に行っちゃって

チラッとこっちを見たかと思ったら




「………悪かった」




「………えっ」




誤……った?




「あんたの事、少しは……信じてもいい……かもな」



「……なんだよ、かもって」





どうしよう…



嬉しくて絶対いま、にやけてる





「うっせーし!!!………借りは返すからな!」





そう言って公園を飛び出していく赤也の後をブン太が追いかける




「…………」




「………追いかけないの?」






今まで一言も口を聞かなかった1人が…


無言でこちらを見つめてて



「追いかける……が、その前にお前さんに聞きたい事がある」




口角は上がってるのに

目は笑ってない




「なにかな…」




まるで…上から下まで見定められてる様な

そんな感じの視線を向けられ、多少わたしもムッとなる




「……何が、目当てじゃ」


「なに…それ」



「何を企んでるのかと、聞いちょるんじゃよ」



スッと切れ長の目に睨まれ、言葉を失う



綺麗な顔だからこそ、怒ると迫力があるんだな




「何も……って言っても、君は納得しないんだろうね?」



「良く、わかっとるのぅ……俺を甘く見るなよ」



別に…



「甘く見てるつもりも、何かを企んでもないけれど……疑いが晴れないなら、見つけてみなさいよ」



「なに…」



「信用してない人の言葉なんて、いくら訴えようが聞く耳もたずなんだからさ……満足いくまで調べたらどう?」



「………」



「私は嘘を言ってないし、調べられて困ることもない……何より満足いくまで調べて、少しくらい信じてくれたら嬉しいし」




「…………なるほどのぅ」



一瞬




ほんの一瞬だけど、"彼"の私を見る目が変わった



気がした




「それには…賛成じゃ、しかと見極めさせて貰うんで覚悟しんしゃい」




「な…っ」




そう言って2人の後を追い、公園を出ていく










「……今の顔は反則だろっ」











いきなり笑顔にならないでよねっ








...
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