緋色の欠片

□募りゆく願いの常動曲(ペルペトゥム・モビレ)
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 彼女が自分を追うようにこの大学に入学してきて数ヶ月。


 柔らかな髪に触れ、華奢な体を抱き寄せてその温もりを感じられる日々は、間違いなく幸せだと言い切れる。


 やはり大学生となっても、少々間の抜けているところは相変わらずで、そんなところも愛おしくて仕方ない。


 恋の病―――しかも重度の。


 ひとりで悶々と考えても、結果そこに考えがたどり着くのだから笑いものだ。


「……おい、祐一」


 そんなことを考える中で、突然かかった声に振り向いた。


「―――真弘か。どうした」


「辞書貸してくれ。英語の」


「……残念ながら珠紀に貸した。悪いが手許にない」


「なにぃ?! そこは幼馴染貸すものだろうが!」


「先に来たのは珠紀だ。もちろん、お前が先に来ても優先相手は珠紀だが」


 さらりとそう述べた祐一に舌打ちして、真弘は踵を返す。
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