緋色の欠片

□君の姿を求めて
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「……先輩、どうしたんですか?」


「え? な、なんでもないよ。ちょっと考え事」


「らしくねーなぁ、俺たちといるときくらい、バカやってりゃいいのによ」


「先輩と違って、悩み事が多いんですー」


「……おい、俺は悩み事何もないバカだって言いてぇのか…?」


「紛れもない事実だろう」


 口元を引きつらせた真弘の側にいた遼が、言い切る。


「んだと?!」


「真弘、落ち着け。飯を踏み倒して台無しにする気か」


 穏やかな口調で呟いた祐一の一言に、真弘は踏みとどまる。歯を軋ませ、全身を怒りで漲らせつつも、真弘は大人しく座った。


 そんな真弘のことなど眼中にないかというように、宿舎から昼食の時間帯になるたびに、こちらへ用意した食事を届けにきてくれる美鶴は、気遣うような声で、珠紀の顔色を伺う。


「珠紀様。お疲れなら、今日のご講義はお休みになられたほうがよろしいのでは…。珠紀様の代わりに、私が代行すれば出席はしたことになるのですし」


 確かに、講義を美鶴が代弁してくれれば、珠紀は今日の午後も出たという証明にはなる。だが、そんな迷惑をかけたくはなく、大丈夫と彼女の心配を気のせいだというふりをしてみせる。
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