ワンドオブフォーチュンF
□メルティング・ポイント
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「あ! いたわっ」
嬉々とした表情で声を弾ませながらこちらへ寄ってきた少女に、エストは眼を瞬かせて彼女の名を口にした。
「ルル。いったいどうしたんですか」
「あのね! エストを探してたの!」
「……何のためにですか?」
「エストに会いたかったから!」
「………っ…!」
即答してきた彼女が口走った言葉によって面映い思いに駆られ、エストは熱の集まった顔を彼女から背けた。
「……エスト?」
「………なんでもありません」
まだ熱さを感じる顔を出来る範囲で平然とした表情に戻して、赤くなった顔を見られないように本へと視線を落とした。