ワンドオブフォーチュンF
□Everlasting dream
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「エストッ!」
振り返って、エストはわずかに瞳の光を和ませた。走りよってくるルルを待って、息を整えるまでは口を閉ざす。
「―――どうかしたんですか?」
呼吸が整ったのを確認して、エストはそう問いかけた。こちらを振り仰いだルルが、柔らかに笑む。
「あのね、今日は魔法薬の授業、上手くできたのよ!」
「―――それは良かった。三年も講義を受けたからこその成果ですね。……まぁ、若干結果を出すのが遅い気もしますが」
「………うぅ…成功を褒めてくれるだけでいいのに…」
「あなたの場合、甘やかしすぎれば、調子に乗って失敗するでしょう。それとも、あなたは一度の成功だけで満足して、他はおそろかにするつもりですか?」
「そ、そんなことないわ! 他の授業も精一杯頑張るつもりだもの!」
拳を作って力説するルルに淡く笑み、エストはその頭をそっと撫でる。
「それでいいんです。あなたは力量がない分、何事も前向きに挑戦していくべきですよ」
「………何故か褒められてる気がしないわ…」
「えぇ。褒めているつもりはありません」
「………エストの意地悪…」
涙ぐむ目でねめつけられたエストは、さりげなくその視線から目を逸らす。彼女のその目を見れば、らしくもない行動を起こしてしまいかねない気がするので。