薄桜鬼
□夢魘の渦に呑まれても
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「本当に助かりました。ひとりでは中々終わらなくて」
「いや。このくらいは当然だ」
彼女が手助けしてほしいと言ってきたのは、大量に在る洗濯物をたたむという作業だった。屯所に人数がいる分、ひとりでやるには骨が折れる作業だ。
普段は手伝ってくれるらしい一と平助は見回りのため不在、左之助と新八両名は昼間から酒浸りで頼れず、総司は体調が優れずに部屋に籠っている。歳三に関しては言わずもがなだ。
ひとりでやろうかと考えていたとき、丁度自分を見かけて頼ろうとしてくれたといわれて、烝はいささか嬉しく思っていた。もちろん、彼女にとっては知り合いで気のいい相手という認識しかないのだろうが。
ようやく全てをたたみ終え、立ち上がった千鶴は烝に深く礼をしてくる。
「本当にありがとうございます。助かりました」
「いや。もしまた何かあったら言ってくれ。出来る限り協力しよう」
「はい。そのときはまたお願いします」
にこやかに頷いた彼女にひとつ頷いて、烝はその場を離れた。