薄桜鬼
□風の丘で仰いだ空
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―――三ヶ月前。
「千鶴ちゃん、たまには丘に行ってみない?」
唐突な言葉に、一瞬驚いて目を瞠ったものの、彼の微笑に心が満たされたかのような安心感を覚えて、千鶴は素直に頷いた。
「………わかりました、行きましょう」
その応答に満足したかのように柔らかい光を瞳に称え、唇の端に緩い曲線を描いて彼は立ち上がる。
そして、自分よりもその一回りは大きなその手を、差し伸べてくれる。
躊躇いなく握り、その温もりに安堵する。花を綻ばせたかのような嬉しそうな表情をした千鶴を、総司は優しい眼差しで見つめ、我が家の引き戸を開けて外へと一歩乗り出した。