薄桜鬼
□陽だまりの温かみ
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あれから数日した頃。巡察帰りに金平糖を買ってきた平助は、千鶴の部屋へと赴いた。
茶を注ぐ手つきも初期よりは危なげがなくなっていて、平助はそんな行動を見るたびに段々と彼女がこの新撰組に馴染んできたことを痛感して嬉しくなる。
「………うん、美味しいっ」
幾ら高かろうと幸せそうに食べるその姿を見るたびに、ああ買ってきてよかったと思えてしまうのだから、本当に彼女は罪作りな娘だ、と時々思う。
しかしたまにそうやって食べ物ばかり持ってきてしまうので、餌付けしてやいないかと心配になってくるのも確かである。
「……平助君、もう食べないの?」
「え? あ、あぁ。 後は千鶴が食べていいよ」
動揺して変に取り繕う平助に、
「平助君、どうしたの? 今日、何かへんだよ?」
「な、なんでもないって!」
笑って誤魔化す平助にまだ疑いを拭えないのか視線を逸らさない千鶴は、ぽつりと零す。
「………平助君も、幹部のみなさんも、最近変だよ」
そこで平助の思考が止まる。……………幹部の、みんな?
「……なんでそこでみんなが出てくんの?」
「だって、最近みなさん同じことばっかり繰り返すから」
「…同じことって?」
「沖田さんも斉藤さんも、原田さんも永倉さんも、湯浴みの後必ず髪拭いてないの。だから風邪引いちゃうからっていつも私が拭いてあげて…平助君?」
わなわなと震えて突っ伏す平助を、千鶴は不思議そうに見つめている。
(………見てやがった…!)
あの日の、千鶴に世話を焼かれたあの光景を見て、みんなが真似し始めたんだ。
言葉だけ聞いてても確信して言い切れるのは、彼女が天然だが魔性の女で在るが故に。
「…千鶴。暫く夜は外に出るなよ」
「? うん」
それから数週間後。
湯浴みをした後の幹部連中が自身で髪を拭いていたのを平助は目撃したとかなんとか。
あとがき