薄桜鬼

□温もりに寄り添って
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「これ、貰ってくぞ」


「……………」


 永倉の言葉と行動にさえ、反応を示せない。ある意味意識はないといっても過言でないか。

 いつものような賑やかさはひとかけらもなく、平助は茫然自失状態である。……だが、その理由を知っている故に、一同は心底彼を羨ましく思っていた。 何故なら、平助は…。


「………平助君? …どうしたの?」


「―――っ! ち、千鶴っ」


 赤面する平助を横目で見ながら、大仰なため息をついたのは、永倉と平助を除く男衆全員だった。出来事を知らない永倉―――朝餉にあわせて起きた上に、事態を知る者が見たことを口にしない…否、したくないためである―――を尻目に、それぞれ頭の片隅で、早朝に目にした出来事を思い浮かべる。
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