薄桜鬼
□天禄を授かりし君の傍に
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「美味しいです、一さん」
「しっかり食べろ。不健康な食生活だと、子が流れる」
「はい。たくさん食べますね」
拳を固く握り締めて勇んで口に料理を含む彼女の傍ら、一は食事を終わらせて立ち上がる。
「出掛けの準備をしてくる。洗い物も俺がやるから、食べ終えたら片付けをせずにゆっくりしていろ」
「そこまでしていただくわけには……」
「気にするな。―――俺がやりたくてやっているだけだ」
薄く唇に笑みを乗せると、千鶴は黙考した後穏やかに笑んだ。
「……夕食は私が作りますね。少しは動かないと、子供を生むとき大変だそうですから」
「……わかった。お前に任せよう」
確かに自分の仕事が終わるのは遅いだろうし、彼女の言い分は自分も医者から聞いているゆえに、一はその彼女の言葉だけには引き下がる。
「無理はするなよ」
彼女に背を向け、ぼそりと放った言葉をしっかり聴きとめたのか、彼女はその耳障りの良い声で、はいとしっかり返答した。