オトメイト作品コラボ連載

□光の軌跡 / 一難去って、また――
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「……ルル。平気ですか」


「うん。エストやラギは?」


「一応男だし、そこまでやわじゃねーよ」


 互いの身に着けていたマントを重ね合わせ、包まるようにして身を寄せ合いながら、三人は星空の下で休む。あまり人との関わりを好まないエストと、女嫌いなラギにとっては、この状況は(本当なら)嫌がるところだ。だが、ふたりとも過去ルルとの触れ合いから、彼女にだけは心を開けるほどの余裕が出た。ゆえに、本来除外されるはずの護衛から、こうして推薦されたわけだが。


「……眠いなら、しっかり休んでください。僕たちは平気ですから」


「……うん…おやすみなさい…」


 夢うつつで応えて、ルルはすぐ目蓋を伏せた。穏やかな寝息が耳元を擽り、エストは身じろぎする。


「……本当に、寝つきのいい人ですね」


「まぁ、日常とは掛け離れた状況に陥って、気を張り続けてたんだ。これくらい許してやれよ」


「……そうですね」


 頷いて、エストも目を伏せる。まだあどけなさの残る顔に、疲れの色を見て取ったラギは、エストにも休むように促す。ラギは夜更かし程度なら平気だが、エストはまだ数えの十四である。年齢的にはルルより幼い彼は、やはり体の疲れを取るために睡眠をとったほうが良いはずだ。


「……そうですね。僕もお言葉に甘えます。頼みましたよ」


「あぁ」
 目蓋が閉ざされ、時間が随分経ってから健やかな寝息が聞こえてきた。ルルよりも寝つきは悪いようだ。まぁ、彼女の寝つきが度を越して良さ過ぎるだけかもしれないが。


「………さて、どうしたもんか…」


 いつでも戦えるよう、剣を抱きかかえるようにしてラギは周囲を警戒している。この中で最も体力に自信があるのは自分なのだから、こういった夜番に自分がなることは承知の上だった。


「……あー、それにしても腹減った…」


 育ち盛りとしては、この空きっ腹はなによりもつらい。だが、十日間我慢しなければいけない状況にある今、そのことを愚痴っても無駄な体力が消耗するだけである。なにより、眠るふたりに言ったところでどうしようもない。


 ……仕方がないが、この問題に関しては妥協するしか道はない。


「……着いたらすぐにでも飯食いに店入んなきゃな」


 小さな呟きは、空気をわずかに震わせて消えた。
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