翡翠の雫

□その為なら死んでもかまわない
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 同級生という生活の一部を共に築く者たちに敬遠され、尚普段どおりにいられたのは、玉依姫という宿命を授けられた姉がいたからだ。


 美少女といっても差し支えないほどに造作の整った顔をしていながら、その小さな肩に乗った荷の所為で、少しでも目を離せばその隙に儚くなってしまいそうな印象を纏ってしまった、優しい心根を持った、大切なひと―――…。


 愛おしかった。―――手放したくなど、なかった。


 一番傍で―――どんなことがあろうとも切れない絆で、繋がっているからと思っていた。それさえ壊れた今、彼女とどう接すればいいのかが分からない。


 今更彼女が自分を異性としてみてくれるとは思わない。どうしてと問われれば、それは彼女の紡いだ絆は、自分の存在を霞ませるくらいに自身との絆を希薄化させた。


 きっと―――彼女は自分をもう見てくれはしない。


 ずっと隣にいたかった、そんな願いを、ひたすら胸中で繰り返す。


 でも、そんなことはできない。―――いや、望めない。


 既に基盤は崩れ、彼女が身を賭して世界を守ろうとしている。それを阻むことが出来るのは、おそらくもう何も無い。
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