ワンドオブフォーチュンS
□こんなにも優しいことを知っている
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「……あぁっ、くそっ……面倒くせぇ」
ぱらぱらと辞書を繰って言葉を調べながら、ラギは不貞腐れた表情で課題をこなす。
図書館の一角に眼光鋭く、渋面をつくって鎮座する彼は、傍から見れば随分素行の悪い生徒に見えるからか、何故か遠巻きに生徒たちはそこを見詰めつつ、傍を通るときはその不機嫌な状態の彼の気に障らないよう、極力気を遣いながら歩く。
しかしそんな周りの状態に気づくことなく、実にむっとした表情でペンを滑らせていたラギは、ぱたぱたという足音を聞いてふと顔を上げた。
「あ、ラギ! 此処にいたのね!」
甘い香りを漂わせる髪をふわふわと舞わせながら、にっこりと微笑んだルルがラギの許へと怯えることなく駆け寄った。周囲は急に顔色を変えたラギに安堵しつつ、それを齎したルルに畏敬の念を孕んだ視線を向ける。
「? これは、知識の課題? イヴァン先生から?」
「……サボりすぎて課題出されたんだよ。面倒くせぇ」
流石に図書室だからとはばかったのか、欠伸を噛み殺しながらそう言ったラギに適当な相槌を打つと、ルルは何を納得したのか、にっこりと笑う。
「なら、手伝うわ! 私も勉強になるし、ラギだってひとりこなすには大変でしょう?」
「お、助かる」
その申し出に遠慮なく甘えたラギは、しかし次の瞬間後悔することと相成った。
―――――なんで、こうなる。
全力で叫びたい思いを堪えつつ、尚且つ熱の集まる顔を悟られないよう強張らせながら、ラギは薄皮程度のぎりぎりの理性で必死に耐える。隣の席に座り、自分が理解できるよう言葉を噛み砕きつつ懇切丁寧に教えてくれるルルの言葉が、一切耳に入ってこない。
課題を覗き込むため、必然的にラギの傍に身を寄せるルルは、彼が今どういう心境でいるのかなど気づきもせず、分かりやすく課題の文章に連ねられた文章を彼女なりに変換させていく。
「ここはね、風属性なの。なんでかっていうと―――」
しかし、手許を動かしていないラギについに気づいたらしい。必死に文章を目で追っていたルルは、何事かと目を瞬かせる。
「ルル、頼むから……もう少し、離れてくれ」
「あ……ご、ごめんなさい」
今にも臨界点突破しそうな理性でなんとかそれだけ言ったラギは、素直に従った彼女の視線から逃れようと手許にあった辞書に手を伸ばした。そうしてぱらぱらと捲っていけば、ふと書かれていた言葉に目を惹かれる。
『煉獄』
―――それは、何気ない一単語に過ぎなかった。だが、そこに書かれていた説明文が、なんとなく彼女の纏う火属性と、似通っている気がした。
天国と地獄の間にある、小罪を犯した者が火による浄化を受け入れる場所―――それが、煉獄。自分がもし相手を苦しめる地獄の炎を操るとしたら、彼女の纏う炎はきっと煉獄の炎。その炎は地獄に落ちる咎人の罪を浄化して、天国へと導く清廉なるもので、きっと暖かく優しい彼女には、似合っていると何故かふと思った。
「………なぁ、ルル」
「? どうしたの、ラギ?」
「………火属性になって、後悔したことはねぇのか?」
返ってくる言葉はなんとなく分かっていたけれど、それでも聴かずにはいられなかった。当然といった表情で、彼女は笑う。
「全然無いわ! だって、ラギと同じ属性だもの!」
「なら、もし―――」
もし、その火属性にも種類があるとするのなら。
「お前は、どんな火属性でありたい?」
その問いに、ルルは少し考えてから、笑う。
「―――誰かを暖められる火属性になりたいわ!」
―――ああ、やはり。彼女は、暖かく……そして、優しい。
「そう、か」
口元に零れる笑みを、ラギは暫く消すことは無かった――――…。
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はっはっは! もう本当何が書きたいのか分からない(泣
とりあえず浄化とか清廉とかそういったものを使って書いてみようとしました。
そしてこの結果。……わぁい、酷い。
地獄と天国の間にあるという、軽い罪の者なら受けることの可能な、浄化の炎のある聖地、煉獄。
まあカトリックの定義ですが、決して管理人はそちらの宗教を崇拝してるわけではありません。
ただ、ネタとして起用しただけですので、勘違いは止してくださいね。
それにしても、ミルス・クレアに辞書ってあるんだろうか。
……でも、レポートとか書くとき必要だよね。………煉獄なんて言葉は、流石にない気がするけど。
それにしても、皆さん本当にこんな駄作置場に足を運んでくれるなんて感無量ですよ。
今までの履歴確認したら、徐々に上がって言ってるんですよね、アクセス数。
12月だけで3054っていうアクセス数をたたき出したとき、結構集まったな、みたいな感じしかなかったんだけど、1月3394、2月3503、そして今のところ3月六時時点で3937まで来てます。
後七十アクセスくらいで四千届くのにびっくりです。すごすぎる。
まあ、そういうアクセスに対する感謝文なのに、駄作が出来上がってしまったのは申し訳ないんですが…管理人は結構自由人なんでどうしようもないです。
……け、けど次こそはもっと甘いやつを…!