緋色の欠片
□君の姿を求めて
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典薬寮の息のかかった大学で、多くを学ぶこと―――二年。争いごととはまるで無関係の日々。それが、今の珠紀を形作るものだった。
昼食をとるための休憩時間。典薬寮の大学に無事入学した珠紀と守護者六人は、季風村を離れて大学の宿舎に住んでいる。
美鶴を、季風村にひとり置いていくのは気が引けたため、珠紀と同室という形で、この宿舎で共に過ごしている。――まぁ、云わば典薬寮にいる友人のコネのおかげなのだが。
一年だけ先に入学していた祐一をはじめ、大学内の学食より、珠紀と美鶴のお手製弁当がいいと言う我侭な守護者たちのために、珠紀と美鶴はいまでも大人数の料理を腕によりをかけて作ることとなっている。
……ささやかではあるものの、慎司も寮でいくらか作ってくれるので、大学内にある学食にいくことはせず、裏庭などにシートを広げ、のんびりとみんなで食事にいそしむのが日課になっている。
ただ、そんなにぎやかな雰囲気のなかで、珠紀は胸に埋めようのない寂しさが募っていることを、実感していた。