S.Y.K
□あなただけの為に
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「……玄奘様? どうかしましたか?」
声をかけられ、玄奘は上の空だった意識をなんとか現実に引き戻した。視線を滑らせれば、心配そうな顔をした悟浄がいる。……そういえば、買い物の量が多いからと、警吏の仕事を半ば無理矢理終わらせて彼が荷物を半分持ってくれたのだったと、頭の中で状況を把握した。
「え? い、いえ……なんでもありませんよ、悟浄」
そういって笑って見せるが、彼は納得しなかったらしい。どこか苦々しげな顔で、悟浄は確信を突く。
「……蘇芳、ですね」
「っ……」
まったくといって連絡の取れない彼のひとの名を聞かされ、喉が引き連れたことを自覚する。
「……全然、来ないんですか?」
「……ここ数ヶ月は、一度も…」
先月の思いを込めた贈り物は、金閣がやってきて持っていってしまったので、直接には渡せていない。
首を振る玄奘の悲壮な表情を苦しそうに見詰めて、悟浄は手を伸ばす。