S.Y.K
□微睡みの海で見し君は
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―――あぁ、またか。頭の隅で、ぼんやりとそう思う。
陽を時折遮る灰白の雲、淡い青で染まった空が、どこまでも続いていく。少し黄みが混じってきた草が広がる草原に寝転がり、空を見上げるその傍らに、目を瞠る彼女の姿。
けれど、それが時が経つにつれ、色を失っていく―――。
どこまでも頭の中に留めていたい記憶が具現化した夢であるのに、やはり時間が流れるにつれて色褪せていく。
それにどこか寂寞の念を抱きながら、彼の意識は、ふわりと浮上した。
「……おはよ、銀」
扉を開けた先に目に認めた黒髪とともに、蘇芳は口を開く。
「おはようございます〜。蘇芳様!」
「……おはよう。で、金は?」
「今日はちょっとした用事とかで出かけていますよ〜」
「あ、そう…」
ふわぁ、と欠伸をして、適当な椅子に凭れ掛かるようにして蘇芳は息をついた。