S.Y.K

□御題<白雪の聖夜>【夢幻】
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【悟空&玄奘】


「夢幻」


「……悟空。いい加減起きてください」


 声音が刺々しく、冷たいものになっているのは自覚していたが、どうしようもなかった。今、目線を落とせば恋仲であるはずの彼氏は、寝台の上で完全に熟睡している。


「……今日はクリスマスだから、デートするって約束したじゃないですか」

 小声で愚痴りたくもなる。いくら揺さぶろうが、頭を思い切り叩こうが、数秒たてばすぐ寝息を立て始める。どうしようもない。


「……最近、寝てばっかりですね」


 こちらが構って欲しいときに限って寝ている。なぜか物凄く腹立だしい。自分が何かしたとでもいうのか、それとも偶然なのか。―――わざとやっているようにしか思えないが。


「…もう、いいです」


 諦めて、玄奘は踵を返そうとした。しかし、その途端くんと引っ張られて体勢を崩しかける。慌てて踏みとどまり、振り返れば、服を掴むのはやはり寝ている悟空だ。


「……放してください、悟空」


 しかし、服から手を放そうとした途端、更に強く引っ張り込まれ抱きこまれてしまう。羞恥と混乱で顔を赤くさせる玄奘の耳元で、悟空の寝息は一定のリズムを保ったまま、響く。


「………仕方、無いですね」


 諦めたようにため息をついて、大人しくその腕の中に閉じ込められる。そうして、いつの間にか眠りについていた。



 急に、身体が寒さを感じたような気がした。不思議に思って、眼を開ければ、傍にいたはずのひとはいない。


「悟空?」


「……おう、起きたか」


 寝台から起き上がれば、目的の人物はすぐ傍にいた。悟空が、自分の顔を見て満足げな顔をしている。なんなのだろうと首を傾げたら、首筋に何かがあたった。


「…?」


 思わず手で触れてみると、耳に何らかの装飾品が付いている。顔を上げれば、悟空が明確な答えをくれた。


「イヤリングだ。……ほら、鏡」


 手鏡を手渡され、思わずまじまじと鏡の中を覗き込む。サファイアと銀でデザインされた、綺麗なイヤリングだ。


「……綺麗」


「気に入ったようだな。よかった」


 笑った彼に、玄奘は感謝の意を述べる。手を軽く振って、悟空は、玄奘の耳に触れた。


「着飾るには丁度いいもんだろ。見せたくないときは髪で隠せるしな」


「はい」


 耳に触れていた手が、頬へと移動される。その手を、玄奘は両手で包んだ。


「……流石に今日がクリスマスだってこと、忘れているのかと思いました」


「悪いな。これ買うのに少し金を稼いで仕事してたんだ」


「―――そうなんですか?」


「ま。そのおかげで寝てばっかりじゃ世話ねぇけどな」


 くつくつと笑う悟空に、玄奘は納得したように頷いた。彼が最近相手にしてくれなかったのは、自分のためか。それを思うと、許せる気がした。


「でも、来年はこういったものはいりませんから、もっと傍にいてくださいね?」


「……我侭な奴だな」


 苦笑しつつも、彼はその言葉に従ってくれる。そんな彼の耳元で、玄奘は囁いた。


「大好きです。悟空」


「………俺もだ」


 夜は、段々と更けていく。そして、二人の影があったその部屋も、いずれ明かりが消されて静まり返った。





+++++あとがき


悟空は、攻略途中なのであまりキャラの特徴がつかめません。悟空ファンのかた、ごめんなさい。

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