ワンドオブフォーチュンF

□Sweet punishment and a better crime.
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 穏やかに過ぎ行く日々の中で、積もり重なる彼女との時間が何よりも愛おしかった。





 すべてを耐えていた日々が一変した試験を終えて、エストはルルに心配をかけた御詫びという名のデートに誘われた。


 しかし、しかしである。


(付き合うとは言いましたが……流石にはじめからこの調子だときついですね…)


 目の前で頬を緩ませてデザートを頬張るルルの姿を視界に入れないように紅茶を啜りながら、エストは静かに息をつく。


「……ルル、いい加減席を立つつもりはありませんか?」


「? エストはもう食べないの?」


「えぇ、元から多く食べる性質ではありませんし、もう充分です」


「そう。それじゃあ、このタルトを食べたら終わりにするわ!」


 遠回しにストップを掛けたというのに、まだ食べるのか。


 日頃から太ることを気にしているのに、こういうときだけは羽目をはずす恋人をじっと見つめて、エストは零れ落ちそうなため息を堪える代わりに、静かに目を伏せた。
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