ワンドオブフォーチュンF
□Sweet punishment and a better crime.
1ページ/6ページ
穏やかに過ぎ行く日々の中で、積もり重なる彼女との時間が何よりも愛おしかった。
すべてを耐えていた日々が一変した試験を終えて、エストはルルに心配をかけた御詫びという名のデートに誘われた。
しかし、しかしである。
(付き合うとは言いましたが……流石にはじめからこの調子だときついですね…)
目の前で頬を緩ませてデザートを頬張るルルの姿を視界に入れないように紅茶を啜りながら、エストは静かに息をつく。
「……ルル、いい加減席を立つつもりはありませんか?」
「? エストはもう食べないの?」
「えぇ、元から多く食べる性質ではありませんし、もう充分です」
「そう。それじゃあ、このタルトを食べたら終わりにするわ!」
遠回しにストップを掛けたというのに、まだ食べるのか。
日頃から太ることを気にしているのに、こういうときだけは羽目をはずす恋人をじっと見つめて、エストは零れ落ちそうなため息を堪える代わりに、静かに目を伏せた。