ワンドオブフォーチュンF

□終わりの見えぬ受難曲(パッション)
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「ふっ……! ふっざけんなああぁぁっ!!」


 ぐしゃりと手中に収めていた紙を握りつぶし、あらん限りの声を力いっぱい振り絞って怒号した少年の傍ら、それを静観していた青年は、いったい何が書いてあったのかと目を丸くした。


「―――ラギ、どうしまシタ?」


 呼ばれた少年―――ラギはその額に縦皴をつくり、あからさまな渋面のまま青年―――ビラールに手にした紙片を突き出した。わなわなと怒りに震えているラギの手中から強引にそれを受け取り、ビラールはそこに書かれた文章にざっと目を通す。


 やがて、すべてを読み終えたビラールは、複雑な表情のまま、無言で苛立ちを押さえるルームメイトを見つめた。


「……これ、まだあるんデスカ?」


「……学院に入り込んでいろいろと言ってきたことがあるが、手紙にしてまで持ってきやがったのはこれが初めてだ」


 やや低くなったラギの声に、ビラールは相当怒っているなぁなどと暢気に思いながら、再び手の中にある皺だらけの紙を確認する。


 いわく。


 体質が多少改善されたことについては、お祝いする。しかし、わたしたちはドラゴンの生態についてもう少し調べたいことがある。また、君と親しくしているひとのなかに、以前特別な素養を持っていた子のことについても調べたい。今すぐ黒の塔へと来られたし。


「……ラギは、いくつもりは、ないデスカ」


「当然だろうがっ!」


 即答され、眉尻を下げたビラールは、ラギと並べて書かれる彼の恋人が、これを知ったらいったいどうするのかと首を傾げた。
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