ワンドオブフォーチュンF

□Now that you disappeared , I see all nonsensically.
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 すべてが色褪せたような、感覚。


 彼女と別れてから幾らかして、段々と薄れ掛けてきた温もりに、エストは思わず唇を噛み締めた。


「………ルル…」


 唇が吐息交じりに何よりも大切な名を紡ぐ。


 体を抱きしめて、今にも失われそうな温もりが逃げないようにと、思ってしまう。そんなことをしても、無意味であることは分かっているのに。


「………一体、僕は何がしたいんでしょうね」


 それでも、彼女と過ごした半年の間、ずっと言われ続けたことは、なるべく守っている。……その日課ともなりそうな行動が、彼女を身近に感じられる唯一の手段だから。


 今日も、また。


 食堂へと赴いて、少食でこそあるものの彼女に言われ続けたことを為そうとしている。そんな自分の必死さに、思わず口の端から自嘲が漏れそうだが。
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