ワンドオブフォーチュンF
□君に贈る揺籃歌(ベルスーズ)
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その日も、恙無く一日を終えるはずだった。だが、届けられたパピヨンメサージュを呼んで、思わず足を運んでしまったのが、きっかけかもしれない。
「……ルル、体の具合はどうですか」
「……えと、今はいいの。熱が下がって、後は咳きが出るくらいだから」
「………そうですか。それならよかったです」
安心したからか、肩の力が抜けたのを自覚しながら、エストはルルの傍にある椅子に腰掛ける。
「…元気の代名詞ともいえるあなたが風邪なんて、らしくないですね。少々驚きましたよ」
皮肉のような生意気な口調だったはずなのに、ルルは嬉しそうに笑う。思わず、エストは剣呑な響きを込めた口調でルルに問いかけた。
「………何故、そこで笑うんです?」
「だって、エストがそんなこと言っても、心配してくれているっていうことが分かるもの」
「……全く。あなたに通じる嫌味がどれほどあるのか、思わず数えてみたくなりますよ」
「………数えなくて、いいからね?」
そう言ってから、ルルは瞳を細めて、口を開く。