ワンドオブフォーチュンF

□寂しさすら翳る笑みに
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「ラギッ」


 騒々しい学園で、唯一共に要ることが苦痛にならないと同時に、自分に覚悟がない所為で泣かせてしまう娘だった。


「――どうしたんだ、まずは落ち着けよ」


 息を弾ませる彼女の肩が上下するのを見て、ラギは落ち着かせるように頭を撫でる。


「……あの、何処に行くの?」


「あん? こんな日は昼寝に決まってるだろ?」


 今更のような問答をして、ふと少女の顔を見れば、どこかこちらの反応を伺う様にしながら、そっと聞いてきた。


「……一緒に行ったら、駄目…かしら?」


 不安そうな表情で見上げられると、どうしても反応してしまう。


 一ヶ月ほど前まで体質の所為で女子から距離を置いていたからか、異性の心の機微が分からない。この間は、彼女の要望に応えることが出来ず、彼女を傷つけることとなってしまった。おかげで寮に引き篭もってしまった彼女に怒りを覚え、女子寮に殴りこみに行ったのは記憶に新しい。


 散々悩んだ挙句、ラギは静かに息をついた。


「………別に構わねぇけど…大して面白くもなんともねーぞ?」


「―――うんっ!」


 花が咲いたような笑顔を向けられ、とことん甘い自分に苦笑が漏れた。
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