薄桜鬼

□君が好きさえ言えない
1ページ/1ページ

 君に、好きという言葉を伝えられない自分は、なんて情けないんだろう。






 屑々として家事に励む千鶴を見ながら、平助はため息をつく。


「俺って、どうしてこー煮え切らねぇんだろ」


 幹部の中で最年少ということもあって、仲間連中からいささか子ども扱いを受けていることは否めない自分は、更に他の連中よりも恋愛に関する知識が乏しい。まともに張り合えるのは、普段からそういったことには目も暮れぬ一くらいしかいないのでないか。


 しかし、それでも頭ひとつ分くらいは、間違いなく一に劣っているのは間違いない。


「………今日は数が多いみたいだな。丁度暇ができたところだ。手を貸そう」


「あ、ありがとうございます。斎藤さん」


 悶々と考えているうちに、洗濯物を取り込もうとしていた千鶴に気づかず、まんまと一に美味しいところを持っていかれた。さりげなくこういった気遣いのできる一の方が、間違いなく自分よりいい男だ。


 しかも、彼の落ち着き払った態度は、副長の土方にも一目置かれている。―――一応、自分と彼は同じ歳のはずなのだが。


「………何か、納得いかねぇ」


 同じ歳で、どうしてこうも待遇に差が出るのだろう。何故か物凄く、腹が立つ。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ