薄桜鬼
□孤独に愛されたひと
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いつも物静かで、強い意志を秘めていて―――それでいて、ひとりでも凜とした背中を、見つめ続けた。
どれほど体を酷使してでも、ひとり奮闘するその姿を、支え続けたいと、思う―――…。
「……斎藤さん」
「……雪村、どうした」
抑揚のない、平坦とした声音。それでいて、吐息を零すかのような声でも反応してくれる彼に、胸の奥が熱を生む。
「……そろそろお休みになりませんか? 土方さんもお戻りになられて、斎藤さんの御体を御気になさっていましたから」
「……そうか、副長が…」
それだけ零し、承諾を示す視線をこちらへ投げかけてきた一に千鶴は安堵する。やはり、上司の名前を出せば効果抜群だ。
羅刹となって、一は過酷な庶務に奮闘するため、昼夜を問わず机に向き合っている。一応彼の身が羅刹に変じたことを承知している歳三に、お茶を差し入れに行った折、彼から命令にも聞こえる頼みを承った。
『―――斎藤に言え、後は俺がやるからすぐにでも寝ろってな』
それを聴いた千鶴は即座に踵を返し、半ば駆けるような足取りで一の部屋へと赴いた。