薄桜鬼
□刹那の口付け
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開けた障子の向こうから差した日差しが、横になっている千鶴の横顔を淡く照らした。傍らに座っていた平助は、滲み出た汗が濡らした千鶴の髪を額から退かせて自らの掌で額を覆う。
「…ごめんね…」
これでは迷惑をかけてしまう。彼のために料理もしてやれない。申し訳なくなって、揺れる視界の向こうにいた平助に呟くように零したのは、謝罪の言葉だ。
「気にすんなよ。いつもこっちが世話になってんだしよ」
しかし、気にする必要はないと穏やかに笑んだ平助に、彼の優しさが胸に沁みて、自然と柔らかな微笑を浮かべる。平助に促され、千鶴はまどろみの海へと沈んでいく。
「…早く良くなれよな、千鶴…」
穏やかに暗示のような言葉を囁かれて、千鶴は小さく返事を返した―――…。