オトメイト作品コラボ連載

□光の軌跡 / 巻き起こる激情は災いを呼ぶ
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 額から鮮血を滴らせ、気味の悪い笑みを浮かべながらゆらりと立ち上がった男を見て土方は舌打ちする。


「……浅かった、か」


 ふと肩越しに見えたふたりの魔法使いを省みれば、既に臨戦態勢を整え、援護がいつでも出来るようにしている。―――心強い。


「……エルフの力を借りたとはいえ……たかだか人間風情が、この俺に傷をつけるなどと……っ!」


 ぎりぎりと歯軋りを立て、ひたすらにこちらに鋭い視線を投げ掛けてくる金髪の青年は、ついに強く唇を噛み締めたことから、薄い紅色に色づいた唇が鮮血で妖艶なまでの赤に色づいた。


 それに激情に比例し、だんだんと淡い金色が抜け落ちて色を失っていくのを目の当たりにし、土方は目を見開く。後ろで傍観していたアルバロとエストも、同様に唖然とした表情を隠せない。


「……あの、姿……」


「……見たことがないね。けど、少なくとも、エルフでも人間でもないことは証明されたわけだ」


 目を見開いてその姿を凝視するエストの傍ら、興味深そうな目でアルバロはそう言いのける。そんな会話の応酬を聞きながら、土方は絵としてしか見たことのないその姿に、思わずその名称をぽろりと零した。


「………お、に…?」


「…………ほう……やはりこの国の人間としては、その程度の知識はあるか」


 不敵に笑みながらそう言いのけた青年は、その名称を否定はしなかった。―――つまりは、そういうこと。
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