オトメイト作品コラボ連載

□光の軌跡 / ラティウムの皇女
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 桃色の髪を揺らし、綺麗なカールを描く睫毛の奥に在る瞳を恐怖で揺らしながら、少女は逃げ惑っていた。その傍には、ふたりの姿が在る。


「…ルル。絶対に守りますから、後ろは絶対に振り向かないでください」


「そーだぜ、ルル。お前が逃げることがなによりも国のためなんだからな」


「……ありがとう、エスト。ラギ」


 ぎゅっと、ふたりと繋がれた手に力を込めれば、ふたりも励ますように力を加えてくれる。今のルルには、それだけが自我を保てる温もりだった。


 ラティウム国第一皇女。―――それがルルの肩書きだ。ラティウム国はエルフの国だが、見目はまったく人間と寸分違わない。エルフの証明となるのは、魔術が使えるというその一点のみだ。


 皇女という血筋も手伝ってか、ルルは全属性という国の中でも稀少な属性を持つ少女だった。加え、彼女の天真爛漫な性格は、民たちにも好感が持たれ、いずれ良縁を結んで国の頂点に立つことを望まれていた。


 しかし、そんな民たちの願いが叶えられるほどにルルが成長するまで後数年といったところで、突如国に異変が齎された。


 黒きマントに身を隠し、何者かがラティウムの王城、ミルス・クレア城を急襲したのだ。


 ルルの怪我は一切なかったが、王族に対する一揆だと判断した大臣たちは、真っ先に後継者の無事を得るために王宮魔術師に最年少でなった天才、エスト=リナウドと、龍との間に生まれた子供ゆえに、魔法に対する耐性の強いラギ=エル=ナギルを護衛騎士として彼女をラティウムの国から脱出させた。


 ルルにとって、祖国を一時でも離れることは拷問のようにつらいことだった。それは、彼女の性格を良く知るふたりには、彼女が無理していることは明らかに目に見えていたし、彼女にとって思い出の詰まる場所が一揆によって少なからず姿を変えることになるのではないかと、悲しげに唇を噛み締めた。
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