翡翠の雫

□鴇色の夢
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 身体を揺り動かされ、傍から大好きな声がした。


「………ず、珠洲」


「…あ、れ? ……克彦、さん?」


「やっと起きたか。まったく、幾ら惰眠を貪れば満足するんだ」


 呆れた物言いだが、紡ぐ声音は柔らかい。


 龍神の脅威に立ち向かい、すべてを終わらしてから一ヶ月を少し過ぎた頃。壬生家と高千穂家は昔から付き合いのある天野家と同等に仲の良い付き合いをしていた。


「………ごめんなさい」


「謝るな。別に怒ってなどいない」


 ため息をつきつつ、速やかに部屋から退出しようと襖に手をかけた克彦は、珠洲を肩越しに見つめて暫し思案した後。


「……お前の家族はやけに下世話なやつばかりだな。中々疲れるぞ」


 ―――その言葉で、ようやく彼が自分を起こしに来た理由を把握した。
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