オトメイトコラボ連載・学園モノ♪

□1.私立レーヴェ学院、守護神寮へようこそ!
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「………エリク。この間はありがとな。あんないい曲、作ってくれて」


「喜んでくれたのならよかったよ。……幼馴染には、気に入ってもらえたの?」


「一番喜んでた。こんないい曲歌えるなんて嬉しいって」


「そっか。曲を渡したとき、ほんの少しドキドキしてたんだ。シンのセンスでいいって言われても、全員に気に入られるかどうか不安だったから」


 守護神活動のために歩き回りながらも、他愛ない会話を交わす高等部三年のシンと二年のエリクに関しても、ほぼ同様のことが言えるだろう。軽音サークルの一員として大学生になった幼馴染が入ってから、まだ高校生だというのにベースを練習し始めたシンは、ベースが抜けたことを理由に、幼馴染に頼まれて一年早くのサークル活動をしているらしい。


 聞くところによるとシンはスパルタだがそれ以上に自分に厳しくて、独学で勉強したベースも納得がいかなかったら何度も練習するほどの努力家らしい。家の事情で勉強もおそろかにできないらしく、成績も常に上位に食い込んでいると下級生の平助の耳にも入っている。高校生なのにしっかりしているのも、その親の事情があるかららしいが、それ以上に無愛想なところがあるゆえに、憧れの対象として遠くから眺めていたい、という女生徒が多いらしい。


 そんなシンに作曲したものを渡したらしいエリクは、演奏家を生むための育成学科―――通称器楽学科で常に感動するほどの腕前を披露するという噂で持ち切りの天賦の才能の持ち主だ。幼い頃から手先の器用さで絵画や彫刻なども手がけているらしく、その作品どれもがシンの同学年である兄のルシアによって売り捌かれているらしい。自分はまだ一度も御目にかかったことがないが、彼の作品を手に入れた人物たちが言うには、『プレミアムな一点もの』なんだとか。――――この学園都市から出ることになるまでに一度はその感動に立ち会ってみたいものだが、彼が出る校内でのコンサートのチケットはレアもので手に入りにくいとも聴く。


「………円、別に小物作りに勤しむのはいいんだけど一応今守護神活動中だから。ちょっと自制してくれるかな」


「え、あぁ……すみません。水羽さん。監視するのも暇でつい」


「うん、気持ちは分かるんだけどね。………ところでそれ、貰っていいかな? お金いるんなら払うから」


「構いませんが……女物ですよ」


「だからこそだよ。好きな女の子にあげるの」


 英円は机に広げた飾り玉や何やらを暇を潰すための手遊び程度の感覚で弄っていたらしいが完成したものは随分とセンスのいいものだったため、遠目で彼の作り上げたものを見て「欲しい」と思わず声を漏らす女子たちがいる中、早咲水羽が交渉に成功しその品物を獲得している。「HANABUSA」レストラン総支配人の息子ではあるが、料理よりもこういった小物作りの方が得意らしい。彼の兄は絶品の料理を作るという話だが、食べたことがないのでどれほど美味いのかは謎だ。


 渡された品物をじっと見つめながら、瞳を優しい光に和ませるのは高等部一年の早咲水羽だ。優しい眼差しの向こうに誰がいるのかは同じ学年ゆえになんとなく察しはつくのだが、時折目に映る友人に向けるものとは随分違う微笑みを浮かべるものだと平助は思う。少女といっても通じる美貌の彼のその微笑みに、男女問わず顔を赤くしている。―――なんと罪作りな。
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