ワンドオブフォーチュンS
□I'll stand by you all the time.
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「………ラギ、何があったの?」
“何か”ではなく“何が”と問うてきた時点で自分に何かあったと確信を持っている彼女に、やはり自分の感情の機微に関しては彼女が一番分かっているようだと苦笑を漏らすしかない。
「―――なんでもねぇよ」
「嘘」
追求は止まらない。
「………あのときと、同じ顔してるもの」
泣きそうな顔が、過去の記憶の彼女と重なった。
過去の世界で傷つき、傷が癒える間薄い膜に満ちた水の中で自身の言葉を聞いていたのだと、自分に告げて本心を吐露してきたあの時の彼女と。
「………今、何も聞かないでいたら、ラギ、またいなくなりそうだわ……っ」
縋り付いてきた両手が、纏う衣服を強く掴む。かたかたとその両手から伝わる震えが、目に見えるほど彼女は体を小刻みに揺らしている。湧き水のように瞳から溢れ出す涙が、大粒の真珠のように、頬を滑り落ち顎を伝って衣服を濡らす。
全霊で自分と離れることを恐れる彼女に、ついにラギは堪えていた感情が堰を切ってあふれるのを止められなくなった。
伸ばした腕が絡めとった身体は、容易く手折れる花のように華奢だから壊してしまいそうで。―――それでも、気遣って力を緩めることも、できなくて。