ワンドオブフォーチュンS
□I'll stand by you all the time.
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離れていたその年月の間に、可憐さやあどけなさが薄れ、女性としての色香が混じり、可愛らしいよりも綺麗と形容するほうが相応しくなってきた彼女に、寄り付く害虫―――もとい、野郎ども……じゃない、恋敵が増えた、と言うことだ。
もちろん既に婚約者として結婚を間近に控えている。しかし田舎ゆえに垢抜けた都会育ちの彼女は容姿のこともあるからか村で生まれ育った他の同世代の娘より一倍目に付き、今では腹立だしいことに老若問わず独身の男性に声を掛けられるようになった。
現に今も、にこやかに会話をする彼女の傍に集まるのは自分や彼女の同世代を中心にした自信と同じ『男』だ。
―――俺のものなのに。
心を救う邪な思いが、彼女の周りを囲む連中に牙を剥き出しそうになる。それを必死に抑え、脳内で描いた連中を蹴散らす具体的な空想が現実にならないように、必死に彼女から離れた場所で見守るしかない。
「あ……ラギ!」
「………………っ」
結果、こちらに気づき、笑顔で駆け寄ってくるルルに反応するのが若干遅れてしまった。
それを敏感に感じたのだろう。眉をひそめて自身の顔を覗いてきた恋人に、ラギは戸惑いの色を宿した瞳で見つめ返すしかなかった。もう少し感情をコントロールできるのなら何でもないふりをしてにこやかに笑っていられたのかもしれないが、残念ながらそんな芸当ができるほど器用ではない。