ワンドオブフォーチュンS

□Only you are seen.
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 新たな魔法具を作り終え、腰掛けていた椅子に座ったままゆっくりと背筋を伸ばす。


 静かな空間。緩やかな時の流れに身を任せていた頃と変わらない時間の流れだが、今はずっと、一分一秒が大切に思える。


 ふと視線を滑らせて時計を見れば、もう昼をすぎていることに気づく。だとするなら、数時間程度待つことになるけれど、彼女を迎えにいってもいい時間のはずだ。


「……ペルー、ルルを迎えに行ってくるよ」


「………早すぎる、と思わなくもない」


 声を掛ければ、応答があった。―――ドワーフとしての【死】を拒み、自らといるために仮面に魂を封じ込め、半永久的な【生】を得た友人は、もう自分のために何かと世話をやいてくれることはないけれど、変わらずに接してくれている。


「後もう少しここにいたとしても、ルルが学院から出てくるまで余裕を持って行けると思わなくもない」


 毎度のように呆れの混じった言葉を投げ掛けられるが、その言葉の端々からなんだか疲れているかのような印象を受けた。それはおそらく、その提案に対する応答がなんなのか、変わらないと分かっていても尚言わずにはいられない、というペルーの心理なのかもしれない。
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