ワンドオブフォーチュンS
□君といる時間それすら
1ﾍﾟｰｼﾞ/3ﾍﾟｰｼﾞ
「……ルル。いい加減にしてください」
片眉をぴくぴくと動かしながら、恋人がずいと口元に運んできたそれをじっと見下ろす。
香ばしい匂いを漂わせる、油の乗ったその肉を、遠慮というものに素知らぬ振りを決め込みエストの口元へと差し出した格好のままのルルは、とっても嬉しそうだ。
「だって前よりずっとエストがいろんなもの食べてくれるようになったんだもの！ 一緒に食べるのもいいけれど、私は恋人らしいことがしたいわ！」
笑顔でそう言い切ったルルをじっと見つめ、困惑を通り越して混乱しそうな頭をなんとか宥めながら、エストはおもむろに口を開く。
「……あー…ん」
「はい、あーんっ」
嬉々として口の中に突っ込まれた肉を少しだけ齧り、咀嚼をし始めたエストをにこにこと見つめながら、ルルは次の一口を待ち構えている。……その様子が少しだけ怖く思うのは、きっと自分がその行為を繰り返すことを恥ずかしがっているだけだとは、分かっているけれど―――…。
「………自分で食べれますから、あなたもどうか食べてください。……切実にそう思うんですが」
「私よりもエストよ！ 食べられるときに食べなきゃいけないもの！」
笑顔でこちらの要求をはねつけ、次々と肉や野菜を挟んだサンドウィッチやらを突きつけられ、エストは動揺を隠しきれずに戸惑うが、彼女の望むままに口の中へと食べ物を詰め込んでいく。
「……もうお腹いっぱいなんですが」