ワンドオブフォーチュンS

□沸騰して乱れた思考
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 この世界へと帰還し、数ヶ月。古代種のふたりに教えを請うているとはいえ、まだまだ彼らと接していると、自分の腕は限りなく未熟だと感じる頃―――…。




 ほとりで休息をとろうとそこまで歩いてきたエストは、先程までの享受された術を制御するための精神力を使い尽くし、混濁状態に陥りながらほとりに根付く大樹に寄りかかった。


 酷く朦朧とした意識は、エストに早急な休息を促してくる。


 それになんの抵抗もなく従うように、彼はそっと目蓋を伏せた。柔らかな日差しが遮られたが、視界は闇色ではなく、鮮やかな橙色に染まった。


 この温暖な気候では生ぬるいはずの風が湖の上を滑ったのか、やや冷気を孕んで頬を叩く。


 その心地よい風に更なる眠りを促されて、エストはついに微睡みの海に沈み始め、静かな呼吸を繰り出し始めた―――…。
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