ワンドオブフォーチュンS

□恥ずかしくてまともに顔が見られないから
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 緑生い茂る裏山―――そこではひたすらに項垂れ、膝を突く少女がいた。傍らに、実に複雑そうな表情のまま、少女の頭を撫でる少年の姿がある。


 少年―――ラギは、本日もまた属性を得たというのに派手な失敗を授業で繰り広げてしまった恋人である少女―――ルルを言葉もなく見下ろしていた。


 何度か唸りを上げ、言葉を繰り出そうとするもののどれほど頭を捻りあげたところで良い言葉を見つけられずにいたラギは、沈黙を守るほか術がない。慰めの言葉が見付からないラギは、ただ何度も髪を撫で付けるくらいしか出来ることが無い。ゆえに、ひたすら彼女の頭を撫で付けていたのだが。


 黙りこくっていたルルが重々しく口を開き、眸を伏せたまま言葉を紡ぎだす。


「………属性を手に入れたのに、前の学校みたいに失敗ばかりなのは、悔しいなぁ…」


「……まだ定着してねーんだろ。最近になって手に入れたばっかなんだからよ」


 紡ぎ出せたのは、彼女が落ち込んでいたとき、何かと文句をつけてくるもののひどく心優しい少年が、彼女を叱咤するように口にした言葉を思い出しての発言だった。あまり勉学を好まないラギにとって、彼のような難しい言い回しこそできないものの、その発言の意味を汲むことくらいならなんとかできる。


 他人からの受け売りとしか言いようが無いが、それでも自分なりの言い回しで彼女を励まそうと試みるが。


「……でもね、やっぱり……何も変わらないの。酷いときは、みんなに怪我をさせてしまうんだもの」


 落ち込むルルがそっとそう零せば、ラギは困惑したような顔で口を引き結ぶ。―――何か、何かないか、彼女を励ます手立ては。
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