ワンドオブフォーチュンS

□不安を消そうとした夜
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「エスト! 今年も流れ星見に行きましょう!」


 にっこりと笑った彼女に言われた言葉に、エストは眉宇を顰める。―――確か、それは。


「……毎年それを捕まえられるはずが無いでしょう。挑戦するだけ無駄だと思うんですが」


「そんなこと無いわ! 頑張ればきっと手に入れられるかもしれないもの!」


「………そんな幸運に恵まれることは、極めて稀なケースだと思いますが」


 嘆息しながら魔道書を開くエストに、ルルの頬が膨らむ。


「最初から無理かもなんて諦めてたら駄目だわ、それじゃ出来ることも出来ないと思うの!」


「……そう考えるのはいいことだとは思います、が……」


 言い募ろうとして、ルルへと視線を合わせたエストは、次の瞬間深い息をつく。断った刹那、涙を零しそうなほどに、瞳を潤ませている。……まさか彼女は分かっているのだろうか、自分がこの顔に弱いことが。


「………わかりました。去年同様、付き合いますよ」


「本当?!」


 微苦笑を唇に滲ませつつ、エストは頷く。


 そうして喜々とした表情で自身の胸に飛び込んできた少女を、エストは躊躇いがちに抱き締めた―――…。
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