ワンドオブフォーチュンF

□無駄なことと諦めたつもりだった、のに
2ページ/4ページ

「………無駄なんです。全部」


 彼女を求めただけ、この身の異質さを疎み、そうなった原因を―――狂信派を、憎む。


 だけど、彼らを憎んで傷つけたところで、何も変わらないどころか、血塗れた自分はさらに、彼女から遠ざかる。


 光である彼女から、また一歩闇へ踏み込んだ自分が、遠ざかるから。


 せめて、これ以上闇には落ちたくないのだ。たとえ闇に抱かれて眠るとしても。


 ―――眠るとき、少しだけでも、心は君に寄り添っていたいから。


 そんなことを考えていたとき、ふと空気が変わったのが分かった。近づいてくる何かが、エストの脳裏に悪い予感を与えた。


 そうして、眼前に現れたものに目を瞠る。その向こうにいるのは―――…


「……駄目、です」


 渇いた唇から、罅割れて掠れた声が零れた。


「来たら、駄目だ―――!」


 けれど、それはやって来る。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ