ワンドオブフォーチュンF
□無駄なことと諦めたつもりだった、のに
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「………無駄なんです。全部」
彼女を求めただけ、この身の異質さを疎み、そうなった原因を―――狂信派を、憎む。
だけど、彼らを憎んで傷つけたところで、何も変わらないどころか、血塗れた自分はさらに、彼女から遠ざかる。
光である彼女から、また一歩闇へ踏み込んだ自分が、遠ざかるから。
せめて、これ以上闇には落ちたくないのだ。たとえ闇に抱かれて眠るとしても。
―――眠るとき、少しだけでも、心は君に寄り添っていたいから。
そんなことを考えていたとき、ふと空気が変わったのが分かった。近づいてくる何かが、エストの脳裏に悪い予感を与えた。
そうして、眼前に現れたものに目を瞠る。その向こうにいるのは―――…
「……駄目、です」
渇いた唇から、罅割れて掠れた声が零れた。
「来たら、駄目だ―――!」
けれど、それはやって来る。