薄桜鬼

□今日という日に負けない様に
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「……あ、通り雨ですね。沖田先輩は、傘は持ってきてないんですか?」


「うん。いつも家を出てくるのが遅いからね」


「…………」


 どう返せばいいのか分からなかったのか、沈黙した千鶴に淡い笑みを投げ掛けながら、総司は言う。


「千鶴ちゃんはどうなの?」


「あ、私は折り畳み傘を持ってきてますから……よかったら、ふたりで使いましょうか?」


 取り出した傘を顔のすぐ横で軽く振った彼女が、小首を傾げて尋ねてくる。彼女のそんな何気ない仕草にすら、胸を占める暖かい感情が、さらに熱を上げる。


「……それじゃあ、お言葉に甘えようかな」


「はい。それじゃあ、一緒に帰りましょう?」


 丁寧に傘を広げた彼女の手からそれを取り上げ、総司は薄く笑う。


「こういうときは男に持たせてね。千鶴ちゃんがさすには随分大変でしょ?」


「……じゃあ、お願いします。沖田先輩」


 ほのかに笑う彼女に了承の意を示し、総司はいつもよりいくらか歩幅を狭めて、ゆっくりと歩き出した―――…。
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