ワンドオブフォーチュンF
□幸せな時間は一瞬にして
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膨れた腹を二、三度叩いて満足そうな顔をするラギに笑いかけつつ、ルルはふと立ち止まる。
「? どうかしたのか?」
「そういえば、ラギの他にビラールにも渡されたんだわ。さっき、ラギの代わりに飲み物を貰いに行ったときに貰ったの」
いったい何なのかしら、と懐から小さな包みを取り出したルルに、自分の前で異性の話をされて不機嫌になるよりも、何故か多大な嫌な予感が脳裏を駆け抜けて、ラギはルルを止めようと声を掛けようとしたが。
時遅く、開け放たれた包みの中に包まっていたそれを見て、ラギは赤面した硬直した。
「な―――!」
「わぁ、これって、ラギ人形?」
瞳を輝かせるルルの手にある包みに何か書かれているのに気づき、半ば無理矢理それを奪い取ってばっと開けば。
『ラギが、ルルのために、作っていたモノ。女の子に手伝って貰って、形にシマシタ』
―――無言でそれを握りつぶし、ラギは踵を返す。
「? ラギ、どうしたの?」
その問いに答えることなく、ラギは向かうのは、当然―――。
「ビラール!!」
「ラギ。どうか、しまシタカ?」
にこやかにそう尋ねてきた銀髪の青年に、彼は背負っていた剣を構えた。
「―――人のモノ、勝手にいじってんじゃねええぇぇっ!」
……かくして、男子寮にて彼の魔法大好き少年が引き起こす騒動並みの事件が起こるのは、避けられない出来事だったに違いない―――…。
あとがき