ワンドオブフォーチュンF
□幸せな時間は一瞬にして
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「ねぇラギ! 一緒にマカロン食べましょう! エルバート先生がくれたのよ!」
「……お、おぅ」
いつもなら即座に食いつく食べ物の話に、やや数秒遅れて反応を示したラギに、ルルは思わず眉を顰める。
「……どうしたの? 何か変よ、ラギ」
「な、何でもねぇ! 気にするな!」
首を振ってそういい募るラギに眉を顰めつつ、ルルは首を傾げながら引き下がる。
そんなルルを見詰めながら、ラギは眉間に皺を寄せて黙り込んでいた。ポケットの中に無造作に突っ込んできたそれを、思わず確認してしまうくらい動揺しているのが情けない。
昨日、なんとか良さげなものを見つけて買ってきたはいいが、まったくもってそのタイミングが掴めない。どうしようかと悩んでいるうちに、既に時刻は午後を迎えてしまった。
悶々と悩むラギの姿に気づくことなく、ルルの足取りは軽やかだ。大好きな甘いものを食べれる良い場所を探すのにきっと夢中なのだろう。
「湖のほとりはエストがいたからきっと邪魔しちゃ駄目よね。だったらどこがいいかしら…」
「……なら、あそこはどうだ? エルデの花が咲く―――」
「あ、そうね! 綺麗な景色を眺めながら食べられるなんて素敵だわ!」
提案にまったく異論を唱えることなく、ルルは楽しそうに笑いながら歩く。そんな彼女に並んで歩きながら、ラギはため息をついた。
「………いつ、渡せばいいんだろうな…」
空気に溶けたその言葉が、ルルの耳に届くことはなかった。