ワンドオブフォーチュンF

□I'm falling in love with him, this person who keeps hurting himself to protect the people he cares about.
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 最終試験のときも、自分を守るためだという用途を黙して自身に光属性の道具を集めさせ使用させ、ただ黙って闇の世界へ消えていった彼の姿を思い出す。


 皮肉屋で、誤解されがちで―――それでもいつでも自分のことを気にかけてくれて。


「私は……」


 この人が好き。この寝台に横たわり静かに寝息を立てる、ひとつ年下の彼が。大切なものを守ろうとして、自分自身の傷つけて、その痛みを隠し続けるこの人が。


「………大好きなの…」


 ぼろぼろと涙が零れ、握る彼の手の甲で弾け、皮膚の上を滑り、無機質な白いシーツに吸い込まれていく。握る手の力が、思わずほんの少しだけ力んでしまった気がした。


 それと共に、びくりと自らの手中の中で彼の手が震えたのを感じて、ルルははっとする。涙でよく見えない視界の向こうで、聞きなれた声が鼓膜を震わせたことに、歓喜の涙を堪えられなかった。


「……ルル?」


「―――エスト!」


 立ち上がり、寝台に足を掛けて身を滑らせる。


 ぎこちなく起き上がった彼に、ルルは一切の手加減を忘れて、湧き上がる衝動に流されるままに飛び込んだ―――…。







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