ワンドオブフォーチュンF
□I'm falling in love with him, this person who keeps hurting himself to protect the people he cares about.
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「……エスト?」
「………何でも、ありません」
それだけ零したエストの顔が蒼白なのを見て取って、ルルは運ぼうとしていたすべてを床に投げ捨てた。それを瞠目して見ていたエストのマントを掴み、やや強引に彼の肩に手を触れる。
「―――……ぅあっ」
零れた悲鳴に、ルルの顔から血の気がざっとひく。こんな、こんな状態で。
「………ごめんなさい」
ぽつりと、ルルの口から吐息混じりに謝罪の言葉が零れた。
「………私の、所為、で…」
零れた言葉と共に、ルルの瞳から大粒の雫がぼろぼろとこぼれ始める。そんな彼女の眦に激痛の走らない左手の指先で、慣れない動きでその雫を拭い取る。
「………それは、違います」
肩で息をしながら、エストは笑う。
「………あなたの為に、僕がやりたかっただけですから」
そう言った刹那、エストの意識はふつりと途絶えた。