ワンドオブフォーチュンF
□I'm falling in love with him, this person who keeps hurting himself to protect the people he cares about.
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「………すみません、エルバート先生。片付けは僕たちで出来ますので、授業を続けてください」
立ち上がり、エストは静かに言葉を零す。促され、ようやく呆然としていた意識を現実に引き戻されたエルバートは、やや上擦った声で首肯し、慌しく生徒たちに続きを促しはじめる。
「片付けましょう。手伝いますから」
「……う、うん…」
壊れた道具を、指先に傷がつかないよう慎重になりながら取り扱うエストに倣うように、ルルもまたそれらに手を伸ばす。
無言で片付け作業が始まった。エストは本を抱えたまま、ゆっくりとした動作で手を動かし始める。だが、時折引き攣れた痛みが肩に走って、エストは手を一瞬止めることもしばしばだ。
しかし、彼女にそれが気づかれないよう、彼女の死角にあるものから拾い集めていることと、自分の失敗が引き起こした爆発の惨状を目にしたショックによって、いつもより周囲への気配りが無くなって、彼女は気づかない。唯一気づく要素として、エストの切り裂かれたマントがあるが、その下から覗く白シャツに血が滲んでいない限り、言い訳は幾らでもできる。
すべて拾い集めて、エストは立ち上がる。引き攣れた痛みがずきずきと頭を麻痺させる。だが、ここで倒れるわけにはいかないと、エストは自身を戒めた。
「……これはどうすればいいのかしら?」
「エルバート先生のところへ運びましょう。これ以上は僕たちにはどうにもできないですし」
そう言って、エストはエルバートの許へ足を運ぼうとして、ぐらり、と目の前が歪み、足元がおぼつかなくなる。