ワンドオブフォーチュンF

□I'm falling in love with him, this person who keeps hurting himself to protect the people he cares about.
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「それでは、はじめてください」


 エルバートの言葉に従うように、生徒たちが渡された課題をこなそうと机と向き合い始める。エストもまた、表情の険しいルルの傍で、エストは懇切丁寧に教え始める。


 だが、難しかったのか段々険しくなっていくルルの表情と共に、エストが肌で感じる魔力の大きさに不安を抱き始める。このままでは―――…。


 予想は見事に的中し、ルルの持つ王冠を飾った杖先で魔力が弾け、大きな爆音を立てる。遠巻きで見詰めていた生徒たちが悲鳴を上げ、ルルから距離をとる。エストは魔法を唱えようと魔道書を開こうとするが、言葉を紡ぐ前に脅威が彼女の身に襲い掛かろうとするのを見て、頭の中で何かが弾ける音を聴いた。


 咄嗟にとった行動にしては、あまりにも自分の行動らしくなかったかもしれない。エストはルルの身体に手を伸ばし、彼女の身体を掻き抱いて自らのマントにくるむ。遅れて、肩を急襲した激痛に顔を顰めた。


「―――――っ!」


 悲鳴を飲み込み、全霊で痛みを堪えながら、事の発端を生み出した少女がかすり傷のひとつでも負わないようにと妙に力んだ腕で彼女の身体を包み込む。


 魔力の爆発をやり過ごした後、エストは息をつきながらルルを離す。呆然とする少女にエストは声をかけた。


「ルル、大丈夫ですか?」


「……うん…」


 頷いたルルに安堵して頬を緩めれば、固い面持ちだった彼女が、仄かに表情を崩した気がした。
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