ワンドオブフォーチュンF
□I'm falling in love with him, this person who keeps hurting himself to protect the people he cares about.
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「それがどうかしましたか?」
「ううん。ただ、隣の席に着きたくて」
「………まぁ、構いませんが…あまり大きな失敗は、流石の僕でも庇えませんよ」
「だ、大丈夫よ! エストに怪我させたくないもの、少しでも身長にやるわ!」
両手の拳を固めてそういい募るルルを暫し見詰め、ふいに顔を背けてエストはぼそりと呟く。
「……僕よりも自分の身を心配して欲しいんですが」
「え?」
「……なんでもありません」
聴こえなかったらしく、首を傾げたルルにエストはそれだけ言って立ち上がる。
「そろそろ昼食の時間でしょう。早く行って食べれば、授業の前の練習の時間もつくれるでしょうし、行きませんか」
「ええ、エストが教えてくれるなら、そうするわ!」
立ち上がり、エストの左手を掠めるようにとったルルは、無邪気な笑顔を振りまいて、エストの手を引く。そんな彼女に文句を言うエストの表情は、やや不満を訴えていたものの、瞳に宿す光は酷く優しかった。