ワンドオブフォーチュンF
□泣かないでと涙を拭った指
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彼女から離れた場所で、ラギは静かにため息をついた。
「何やってんだ、俺は…」
左手で頭を掻き毟りながら、ラギは右手をじっとみつめる。その指先には、まだ僅かに光を弾く雫が残っていた。
それが何なのかは、自分の先ほどの行動を省みれば明白に分かる。―――これは、自分の前で泣き崩れた少女の、涙の残骸。
「……俺が、まだ弱いんだよな」
苦笑が滲むのを止めようが無くて、ラギはくずおれる。―――随分と、弱くなった気がするのは、きっと気のせいではない。
「……俺は、あいつのために何も出来ねぇんだよ」
彼女はきっとそれでもいいと言う。傍にいてくれれば、それで充分だと笑ってくれるのが、常だから。―――だけど、自分がそれで満足することが出来ないから。
「………悪い、ルル」
口に出来るのは、懺悔の言葉だけ。―――それ以外、言葉は何も見付からなくて。
「………何が、悪いのデスカ? ラギ」
突如背後から降りかかった声に、ラギは肩をびくりと跳ね上げて振り返る。
「………っ! び、ビラール」
「……話した方が、楽になるかもしれないデス」
「………そうかもな。だけど、これは俺の問題だから」
「………そうデスカ。……無理は、しないでクダサイ」
「……分かってる」
仄かに笑んで、ラギは空を仰ぐ。
「……できるだけ、足掻いてみるしかないな」
それだけ零して、ラギはすべての光を遮断するかのように、世界から目を背けた―――…。