ワンドオブフォーチュンF
□泣かないでと涙を拭った指
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それから、すぐのこと―――…。
「……何処にいる…?!」
彼女がいない。どこを探しても。
自身が思いつめていた期間、彼女が何を考えていたかなど、知らない。だけど、どうしようもなく嫌な予感が拭いきれなくて。
彼女とよく行く場所は探しつくした。けれど、いない。―――なら、どこに?
逡巡して、ふとひとつの考えが閃く。
「……裏山…」
そこにいなければ、もう自分には手がかりがない。―――けれど、その一縷の望みに掛けるしかない。
いつもより早足で、だが確実に行き慣れた場所へと足を運ぶ。
そうして、彼は目撃する。
「………あの、馬鹿…!」
少女に襲い掛かる、紅蓮の炎。―――その力の大きさに、守らなければという気持ちだけが彼を動かす。
届け。この手に。―――自身よりも、小さなその身体に、この手が。
必死に手を伸ばす。どこにそんな力があったのかと、疑いたくもなる脚力で、彼はひたすらに平原を駆ける。
そうして捕まえた身体に傷ひとつないことに安堵しながら、彼は迫られた選択に迷い無く決断を下した―――…。
どれほど自分に覚悟がないかは、重々承知している。
―――だけど、きっと俺は。
彼女が窮地に立ったとき、何を犠牲にしても守ろうとする意志だけは、持っていると、信じている。
あとがき