ワンドオブフォーチュンF

□護りたいんだ、誰よりも。
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 誰も信じない。……それが、傷つかない唯一の方法だった。


 信じられるのは自分だけ―――そう暗示を掛け、ただひたすらに希望を祈っていた過去を忌まわしきものだと嫌悪し続けて。


 存在自体が罪だった。居場所を求めることすら許されないと思っていた。―――ただひとり、孤独という絶望の中で朽ちていくことを………受け入れていた。


 柔らかな陽射しも、穏やかに吹き過ぎていく風も、自らの眠気をその冷たさで取り払ってくれる水でさえ、『闇』そのものである自分からすれば、決して『闇』である自分が触れてはいけない清らかな『光』だと頭の隅で考えていたと思う。


 そんなときに彼女とであった。


 どれほど辛辣な言葉を並べても、強い語調で拒絶しても―――めげずに自分と向き合おうとする彼女の真摯な瞳を、真っ直ぐな心を――愛しいと、思った。


 そうして手に入れた彼女は、同時に僕と同じ属性を纏った。


 けれど、彼女はそれでも変わらない。


 たとえ闇を従えていても、どこまでも『光』である彼女は、同時に僕の光なんだ―――。


 だからこそ、守りたい。


 この先、僕とおなじ境遇に生まれついた彼女を、すべてのものから、守りたいと。……いや、違う。


 ―――守り抜いて、見せると。
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