ワンドオブフォーチュンF
□護りたいんだ、誰よりも。
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「………ルル、そろそろ休みましょう。いろいろあって、疲れたはずですから」
そうして離れようとすれば、すがりつく両手の力が強まった。
「………ルル」
困惑したように恋人の名を呼んだエストは、震える声で彼女が紡いだ言葉に瞠目した。
「………傍にいて…」
「……っ」
面映い気持ちが、エストの心臓に早鐘を打たせる。しかし、ここは女子寮で、自分は実質いてはいけない場所だ。そこに長居しては、問題がある。
だが、これほどまでに頼りない彼女を、放ってはおけないのも事実で。
「………お願い、お願いだから…」
震える声が、身体が、あまりにも悲しかった。
「……分かりました」
きっと、こうなることを想定していたのかもしれないと、エストはルルの友人である気弱な少女の姿を脳裏に描いた。きっと今頃は、一緒にいた三人の誰かと同じ部屋で過ごしているに違いない。
「……傍にいますよ、今日だけは」
髪を梳くように撫でながらそう言えば、少女は僅かにその力を緩めた。そのことに安堵して、エストは穏やかに微笑む。
「……どうか、休んでください。ちゃんと、いますから」
「………うん…」
その促す言葉が、ルルの張り詰めた琴線を断ち切った。大した時を要すこともなく、ルルが微睡みの海に沈んでいく。
その寝顔を暫しの間眺めた後、エストは自らも眠ろうと、その瞳を閉ざした。
―――どうか、これ以上彼女が傷つかないようにと、願いながら。
あとがき